(2020年6月)父の日に寄せて

私の父は、若い時からずっとタバコを吸っていましたタバコ

喫煙に対して今より大らかだった時代。

私の幼い頃の記憶にも、家には吸殻で山になった灰皿や、私をひざにのせて、普通にタバコを燻らせていた父が浮かんできます。

健康のために、何度か禁煙を試みるも、結局挫折して、また吸い出す…の繰り返しでした。

「わしは、病気にはならん!」と半ば開き直っていた父。

その公言通り、大きな病気も全くせず、健康診断は常に良、それをいつも自慢していました。

父は、県内外を問わず、転勤がある仕事についていたので、単身赴任をしていたことが多かったです。

なので、その時代の男性にしては、家事全般が得意でした。(飽きっぽいのと、荒いのが欠点でしたが…うわー、その辺、私そっくりだな笑い泣き

定年後は、趣味の俳句や母との旅行、家庭菜園などに精を出していました。

私が結婚した後、母(妻)が病気になり、その介護と看取り。その後、兄(息子)の結婚、その孫の子守、

その後は祖母(母)の介護と看取り…

ゆっくり老後を楽しむ暇……もないくらいでした。

祖母を看取り、孫たちも順調に保育園に行き出し、ようやく一息ついた春。

「最近、やたらと喉が渇いてなーー」

と、氷をたくさん入れたコップの水を何杯も何杯もお代わりしていた父。私は特に気にも留めず、ふーんと返しただけでした。

思えばあの頃から、体調がおかしかったようです。

咳も頻繁に出るようになり、風邪かと思って受診したら…

肺がんでした。

すぐに抗がん剤治療を始め、一旦は治ったかに思えましたが、すぐに効かなくなり、あれよあれよという間にどんどん悪くなっていきました。

私も、思う存分介護がしたかったのですが、まだ子どもも小さくて、思ったより出来ず。

でも何より、父が、私や兄の負担になることを嫌うのです。

父は、母も祖母も看取った経験から、看取る側の大変さが骨身に染みていたのでしょう。

同居の兄夫婦にも一切頼りませんでした。

一人でさっさと入所施設を決め、お金も自分で払い、病院と施設を行ったり来たりする暮らしを選びました。

そして、自分が亡くなった後の財産分与から、家のこと、色んな事を、まだ身体が動くうちに全て済ませていました。

だいぶ体調が悪くなりながらも、それでも抗がん剤治療を続けて、体調が上向きになった頃。

主治医の先生から突然電話がありました。

「もしかしたら、お父さんが急変することもあるかもしれないので、会わせたい方などがおられたら、今のうちに」と。

私の目からは、そんなに急変するとは思えないくらい元気な感じだったので、???と思っていたのですが、それから1週間後に、本当に急変して、そのまま亡くなってしまいました。

9月のお彼岸の頃。

病気発覚から半年も経っていませんでした。

わたし的には、まだまだ、父はガンに打ち勝って、生きられると思っていたのに。

後で、主治医の先生から兄にこんな話があったそうです。

〜実は、私には、少し霊感みたいなものがあるんです。

ちょっと前に、夢で、お父さんの側に見たことのない女の人が着物を着て立っていて「お世話になりました」と言っていたんですよ。その女性の顔が、お兄さんに似ていてね。もしかしたら…と思って、妹さんに、急変するかも、と電話しました〜

この手の話はぞぞぞーっとする方が多いと思いますが、私は、聞いて妙におかしかったです。

だって、

「絶対それ、お母さんだわ。着物着て、先生に律儀に挨拶するって(笑)あの世でも、いいカッコしいのお母さんらしいわ」

と思ったからです。

ああ、お母さん、迎えにきたんだね。

しかも、1週間待ってくれてたのは、うちらが、先生の助言無視して、まだ大丈夫だからと、近場に一泊旅行に行ったからでしょ?

旅行から帰って来たから、安心して迎えにきたんだね。

こんな時まで、甘えちゃってごめんね。

まだ、父の死は先だったという思いと矛盾しますが、気持ちのどこかで、父の死をすんなりと受け入れられた自分もいました。

ー母の死の経験があるからなのかー

ー亡くなったのが父だったからなのかー

ー自分も母になり、強くなったせいなのかー

ーいや、多分、あっちでお母さんが待ってるから安心したことが大きいのかな?

何となく、父がこの世でやるべきお役目が終わったんじゃないかと、妙に納得している私ー

オットの父ももう亡くなっていたので、子どもたちは、おじいちゃんがいません。

記憶もあまり無いみたいです。

お年玉の季節になると

「私にもおじいちゃん欲しかった」

と言っています(笑)おじいちゃんは、お小遣いマシンか!

そういえば、父がまだ、抗がん剤治療を受けてた時、聞いたことがあります。

「ねえ。今でもタバコ吸いたいと思う?」

「…本当に吸ったら不味いと感じるだろうけど、たまにひょいっと吸いたくなるねー」

と言っていました。

こんな身体になっても、タバコが欲しいんだね…。

本当にタバコは恐ろしいです。

でも、今でもたまに、ふっとタバコの匂いがすると、瞬時に父を思い出すのは、幼い頃の記憶の刷り込みなんでしょうね。

今日は父の日。

あなたは、遠いところで、母とのんびり好きな読書やタバコを楽しんでいることでしょう。

こんな風に思う事くらいしかできないけれど。

Tomoko Endo
ハルジオン店主
2021年から、雲南市加茂町の古民家で、家族四人と、保護犬一匹と暮らしています。

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